智恵子抄の旅2

光太郎と智恵子は、二人で温泉巡りをするのが好きだったようです。
後年、智恵子の精神分裂症の症状がいよいよ進んできた頃、光太郎は長い休みを取って、智恵子を連れて福島近在の温泉地をいくつかまわりました。

そのうちの一つに、福島市の西に位置する、ちょうど二本松から磐梯山のほうへ抜ける道の途中に、「土湯温泉」がというところあります。
荒川の渓谷に沿って宿が建ち並ぶ、所謂温泉街です。
その奥に「不動湯温泉」という、一軒しか宿のない、まさに「鄙びた」という表現がぴったりな温泉場があります。
光太郎と智恵子が訪れたのはこの「不動湯温泉」だったそうです。
二人が訪れたという温泉地のほとんどが、賑やかな温泉街を抜けたさらに奥に佇む静かな温泉場でした。
ある本には、分裂症の症状が目立ってきた智恵子を気遣って、光太郎は人目の付かない温泉場を選んだと書いてありましたが、それもあるでしょうけれど、二人は静かな場所が好きだったのだと思います。

この「不動湯温泉」に行く途中に思わぬトラブルが発生しました。
温泉場の名前だけを頼りに、たいして下調べもせずに行ったのですが、標識に従って車で進んでみると、どんどん山奥の険しい道に連れて行かれます。
それも途中から砂利道で、道も細いし対向車が来るかどうかヒヤヒヤしながら運転していました。
上りの道をゆっくり進んでいき、あるカーブに差し掛かったところで、すごいスピードで下りてくる対向車が。
向こうの車が止まりきれずに衝突!
あちゃ〜。
私の車の右前輪と運転席ドアが負傷しました。
幸いけが人もなく、大した事故にはならずに済みましたが、旅行の初日にこれですから、これは何かの暗示か?と思いましたが、起きてしまったことは仕方ない、と気を取り直して事故後にちゃっかり不動湯温泉に入ってきました。
宿から長い階段(これがみしみしと頼りない)を下りていくと、川沿いに露天風呂があり、自然の中で川の音を聴きながら入る温泉、最高でした!
今度は泊まりでゆっくり来たいと思いました。
次回はジープか何かで、完全体制で臨みたいものです。
それくらい、険しい道なのでご注意を。

しかし、光太郎と智恵子は、土湯温泉から不動湯温泉までの山道を、一時間くらいかけて歩いたそうです。
病気の智恵子さんも、足はとても強かったのだなぁ。

つづく

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