『夜、うつくしい魂は涕いて 中原中也14の歌』制作のはなし⑤

2017年の7月から9月にかけて、ヨーロッパに武者修行に出かけました。スイスでニック・ベルチュのワークショップに参加したり、イタリア・シエナのジャズの学校の講習会に参加したり、その他ヨーロッパをあちこち旅しました。
ちょうどこの旅に出る前にアルバムのレコーディングを済ませていたのですが、フィンランド・ヘルシンキでコンサートをすることが決まっていたので、それに合わせてどうしても音源を持って行きたくて、エンジニアさんに無理を言ってミックスとマスタリングを大急ぎでしました。作業は出発の前日までかかり、出来上がったマスターを大事に抱えて日本を発ったことを思い出します。
マスターさえあれば、ヨーロッパのどこかの国でプレスができるだろうと考えたのです。本当に時間がなくて、苦肉の策でした。でも、実はこれはとても良い選択でした。
最初に着いたのはスイス・チューリッヒでした。ニック・ベルチュのワークショップに一緒に参加して仲良くなった友達に、チェコのプレス会社を紹介してもらい、そこでプレスすることにしました。
旅を続けながらずっと業者とメールでやりとりをして、なんとかコンサートの日に間に合うように手配ができました。しかし、コンサート前日にヘルシンキで受け取るはずの物が届かない!という事態に。ヘルシンキでいろいろと世話をしてくれていたヴァイオリン藤田有希ちゃんが、コンサート当日の朝、なんと配送センターまで取りに行ってくれて、無事、手元にCDが届き、コンサートに間に合ったというわけでした。なんともひやひやした出来事でしたが、いろんな人に助けられて手にすることができた思い出深い盤です。
でもこのチェコプレス盤はとても音質が良いんです!チェコはアナログ盤の製造も評価が高い国ですが、このCD盤もクオリティが高くてとても気に入っています。
今回新しく作ったCDはタイトル、ジャケット、ブックレット、プレスも、全く新しく作りましたが、音源の内容はチェコ盤とほぼ同じです。
私にとってこのチェコプレス盤は、2017年のヨーロッパの旅のことがとても懐かしく思い出されて、非常に思い入れの深い盤です。番外編として永久保存したいです。
ちなみに、チェコ盤のジャケットの表紙には友人の前友洋さんの絵を使わせていただきました。前さんの絵の中では異質なこの絵の雰囲気がすごく好きです。
つづく


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