Jan Gunnar Hoff 2016ツアー終了

2月6日~2月9日までのJan Gunnar Hoff ツアーが終わりました。
私は初日と二日目の3公演(代官山・柏・横浜)を聴きました。上越・金沢の公演は聴けず残念でしたが、3回のコンサートで感じたことを忘れないように書いておきます。

彼はいつもツアーのためにセットリストを作って来て、ある程度はそれに沿って演奏するのですが、そのときによって曲順を変えたり、違う曲に入れ替えたりします。
今回のセットリストは、昨年と大幅には変わっていませんでしたが、新曲が2曲入っていました。「Absence」という曲と、「Within」という曲でした。深い哀しみの曲と、わずかに光りが射した曲、というふうに連続で演奏をしていましたが、彼はこのように二曲を対比させて演奏することがよくあります。これは、彼の住んでいるノルウェー北部の気候が大きく影響していると思います。夏は一日中太陽が出ていて明るい、冬は一日中太陽が出なくて暗い、とてもはっきりしています。だからと言って単純に明るい曲、暗い曲というわけではありませんが、厳しい冬はエネルギーを内に溜め、春になると解放させていくというサイクルがそのまま音楽になっているのだと思います。そういえばグリーグの音楽にもそんなところがありますね。
Jan Gunnarの音楽は大変美しいですが、他のヨーロッパの音楽に見られるようなロマンティシズムはそこにはありません。最愛の奥様のために作ったと彼が言っていた「Coming my way」という曲でさえ、爽快さはあっても甘さはないのが面白いなと思いました。そこが彼の音楽の魅力です。
それから、昔の曲も弾いてくれました。柏公演では「Moving」、横浜公演では「Now and then」という曲です 。両方とも1995年のアルバム「Moving」からの曲です。
ダメもとで「弾いてくれる?」と言ったら、最初は「バンドのために作った曲だからソロでは難しい」と言っていたのですが、サウンドチェックの時に確認して、「弾く」と言ってくれました。
これらの曲は彼が30代のときの作品ですが、大変瑞々しくて美しい曲です。この頃のほうがよりジャズ的な響きがしますが、自然、且つ抜け感のある転調の仕方など、彼の作曲の技がとても冴えています。

今回のツアーで、前回の来日時より変化していたと感じたところは、全体的にクラシック的アプローチが多かったところです。彼の国のグリーグはもちろんのこと、ドビュッシー、シューマン、ショパンもそこかしこに感じられました。そこのところは聞かなかったのですが、彼の中で何か変化があったのでしょうか。
彼は「即興演奏は作曲を試みる場所だ」と言っているように、曲の中の即興部分や、曲と曲の間の繋ぎでは、毎回新しい音楽が生れています。また同じ曲でもあえて違う伴奏形を持ってきたり、和音の作り方を変えて実験していることがよくわかります。
このような場面に立ち会えることは、私たち若い音楽家にとってはとても励まされることです。即興演奏というと、今生まれてすぐに消えてしまうものというイメージがありますが、彼の演奏を聴いていると、未来に可能性を託している、という感じを受けます。未来とは、永遠でもあり、死に向かっていることでもあります。彼の演奏はそういったことを感じさせる、言ってみたら最も人間臭い音楽なのかもしれません。

私は、Jan Gunnar Hoffの音楽からとても大きな影響を受けました。この素晴らしい音楽を皆さんに知ってもらいたくて、今回私の知り合いの何人かの方にも生で聴いてもらうことができました。次回はもっと多くの方とシェアできることを願っています。次回来日を楽しみに待ちましょう!

偉大なるマエストロありがとう!!

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