16 Aug 2017

ヨーロッパ旅の記録〜ベルギーの旅3

8月16日
Danielから「Liegeで面白いお祭りがあるから行ってみないか」と提案があった。Liegeとはベルギーの東に位置する、オランダとドイツとの国境近くにある街だ。
どんなお祭りなのか、インターネットで調べた。
「Mati O'hreという名の骨の葬儀があるから参列者は黒い服を着用、セロリを持参するように」とのこと。それ以上のことは何も書いていない。意味不明だ。とりあえずDanielに黒いシャツを借り、冷蔵庫にちょうどあったセロリをカバンに入れ出発した。
ブリュッセル中央駅から列車で一時間ちょっとでLiegeに着く。駅を降りても人は少ないし、本当にお祭りがあるのだろうか?
会場までの道すがら水族館を見つける。まだ時間もあるし、Danielは大の水族館好きらしく、入りたいと言うのでしばらくそこで過ごすことにする。水槽の魚を見ながら、「僕はもし人間じゃなかったら魚になりたい」「だからあなたはプールで泳ぐのが好きなのね」とそんな会話をした。
水族館を後にし、お祭り会場である市街の方へ歩くと、ちらほら黒い服の人たちが見え始める。それも本当にお葬式に参列するような正装なのだ。ますますどんなお祭りなのか、疑いとワクワクが高まってきた。
市街へ出ると、もう既に祭りの雰囲気だ。黒い服を着た人たち、中には女装をする男性や魔女のような格好をした女性など、半分仮装パーティーのような感じだ。そして、全員手にはセロリを持っている。どこからかバンドの演奏が聴こえてきて、皆その音の方へ連なって行進を始める。音楽は、底抜けに明るい曲調と、わかりやすく悲しい曲調と二種類が交互に演奏される。それに合わせ群衆は、明るい曲調のときはセロリを振りながら踊ったり叫んだりする。悲しい曲調のときは隣の人と手を取り合って声を上げて泣く。そしていよいよ主役である故Mati O'hreが司祭に導かれてやってくる。Mati O'hreの棺が通ると人々はますます声を大きくして泣く。私も他の人に習って同じようにした。同じようにして気付いたことは、この祭りの一番の目的は、人々と喜びや悲しみを共有するところにあるのではないか、ということだ。もちろん、本当に悲しんで泣いているわけではない。フェイクだ。けれどもイミテーションでも感情の種や熱を発露することが彼らの人生の表現活動なのだ。骨の弔いやセロリにどのような意味があるのか、またはないのかは結局わからなかったが、この際それはどうでもよい。ヨーロッパでは、隣人と共有する時間や場所やシチュエーションが最も大事にされる。私がヨーロッパにいる間中、一人になることが少なかったのは、いつも誰かが時間を共有してくれていたからだ。
周りを見ると、東洋人は一人もいない。近くの人が珍しがって「Chinese?Japanese?」などと聞いてくる。あるおじさんは、「日本に良い土産ができたね」と言ってくれた。そうだ、今過ごしているこの時間が思い出という土産なのだ。セロリを振りながら街頭を歩いたのも初めてだし、骨の葬儀に参列したのも初めてだし、途中で飲んだベルギービールや、Liegeの郷土料理やスイーツも格別に美味しかったし、来てよかった。
日も暮れて暗くなった頃、川岸に座り、Danielが肩に持っていたギターを取り出し歌い始めた。この美しい時間も大事に持って帰ろう。

葬儀に向かう紳士と夫人

司祭もセロリを振る

これがMati O'hre

セロリを振る群衆

Liegeの郷土料理のミートボール

このフォンダンショコラはこの旅No.1

夕暮れのムーズ川

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