7 Aug 2017

ヨーロッパ旅の記録〜Siena一週間の終わり

8月6日
ワークショップも残すところあと2日。いつも通り午前と午後の授業があり、夜には学生たちのコンサートだ。
このワークショップはトータルで二週間行われていて、前半と後半で講師が入れ替わる。なのでフルで参加している学生は前半に二つのコンボ、後半に二つのコンボのクラスがあり、それぞれにかなりの曲数と課題が出され忙しそうだったが、魅力的な講師陣や仲間たちとのひと夏の時間を謳歌しているようだった。ほとんどは10代か20代の学生だった。
エアジンの梅本さんのお友達がちょうどSienaにいると聞き、すぐに連絡を取り、今夜の学生たちのコンサートに一緒に行くことにした。カンポ広場で待ち合わせをした。クラシックのヴァイオリニスト小笠原伸子さんとピアニストの岡部由美子さん。思いがけず日本人と、しかもここSienaで会えるなんて思わなかったからとても嬉しかった。彼女たちは夏のヴァカンスとご自身のコンサートのため毎年Sienaに訪れているという。イタリア語も堪能だ。
コンサートはカンポ広場のある中心部から少し外れたところにある丘の上で行われた。野外ステージが組まれ、皆お酒を飲みながらコンサートを楽しんでいた。Sienaの美しい夜景も一望できる最高のロケーションだ。
私は一週間聴講していたコンボの学生たちの演奏がとても楽しみだった。とてもレベルの高い学生たちの演奏。Susanneのクラスのguysの演奏もとても良かった。コンサートでは講師もコンボに加わり演奏するので、Susanne自身の歌声も聴くことができて感動した。
日本からのお友達もSusanneに紹介した。Susanneはイタリア語が話せるので、彼女たちとイタリア語で会話をしていた。
Susanneは1日目の演奏を終えてやや興奮気味で、学生たちの演奏をもう少し聴いていくというので私も付き合った(コンサートは夜遅くまで続く)。素晴らしいミュージシャンは皆そうだが、どんな音楽も分け隔てなく熱心に聴く。ヴォーカルクラスで教えていた生徒たちの演奏を聴いては彼女たちに声をかけたり感想を言っていた。そういった細かい気遣い一つ一つに感動する。
コンサート後、Susanneと歩きながら帰った。私は今日のコンサートの感想を述べた。彼らが初めは授業を退屈そうにしていたこと、そのうちに音楽にのめり込んでいったこと、その変化を導いた彼女の素晴らしさ、そういうことを下手な英語で伝えた。音楽を共有するということは、お互いの理解を深め合うということだ。Nikのワークショップでも感じたことだが、ヨーロッパの人は共有することが基本にあって、その共有する時間や物事をいかにお互いにとって有効で快適なものにするかを徹底的に話し合う。あなたはどう思う?と常に問いかけ、問いかけられるのだ。素晴らしい文化だと思った。
Susanneも熱っぽくいろんなことを話してくれた。夜の灯りに照らされた美しい旧市街の街並みが私たちをより親密にしてくれた。こんな素敵な夜は忘れられないだろう。

8月7日
いよいよワークショップ最終日だ。学生たちは昨夜のコンサート、それから今夜のコンサートの準備もあり皆疲れていて、朝の授業はまばらだった。昨夜コンサートを終えたSusanneのコンボクラスのメンバーは元気に授業にやってきて、昨夜の感想を言い合っていた。最後のクラスなので、学校の前のカフェに行こうということになった。イタリア人はとにかくよく喋る。ヨーロッパの人は喋ることが基本にあるが、イタリア人は特にお喋り好きだ。だから、イタリアではイタリア語を話すことが必須なのだ。Susanneの母国語はドイツ語だが、イタリア語、フランス語、英語、たぶんオランダ語も話せる。彼らとは英語で話していた。バンドメンバーはすっかりSusanneを慕っているのが話している様子でよくわかった。
ここへ来るまでは、彼女がどんなふうに話し、どんなふうに考え、どんなふうに人と接するのか、ほとんど知らなかった。しかし彼らのように、ひとたび彼女のことを知ると、その魅力に引き込まれてしまう。そういう人だ。
午後のクラスはいくつかのクラスが合同になり、なんと講師陣のセッションが聴けた。NYで活躍している黒人ミュージシャンと一緒にSusanneは'Round midnightを歌った。なんというサプライズだろう。私はこの瞬間彼女をより一層誇らしく思った。
ジャズという音楽は今はアメリカの音楽だけを指すわけではないが、アメリカの文化の中で成熟した経緯があるため、ある種民族音楽的な側面もあり、言語で言えばアメリカ英語の音楽である。母国語圏の人の話すジャズ語とそれ以外の人が話すジャズ語にはやはり違いがあるように思う。彼女はヨーロッパで活動しているので普段ネイティブのジャズメン(あえて言えば)と一緒に演奏することはあまりない。彼女もそのことは認識しているし、ネイティブの彼らに対しては一目置いてリスペクトしていたように思う。しかし彼女のジャズ音楽に対しての造詣の深さは彼らに劣るものではないということははっきりとわかった。このことも後でSusanneと話した。
夜はコンサートの二日目。小笠原さんと岡部さんも再び合流した。今夜はSusanneが最も手を焼いていたもう一つのコンボクラスの演奏があった。こちらのクラスは皆若く演奏も未熟で、Susanneは仕上がりを心配していた。しかしSusanne独特のやり方で、味わい深い良い音楽に仕上がっていた。こういった一つ一つの過程を見ていくと、教師として教えるということは、音楽の知識だけでなく、プロデュース能力、コミュニケーション能力、忍耐強さ、学生に慕われるべき人格を備えていないとできない。だから彼女は毎年この学校の講師に招かれているのだ。私が彼女の音楽に惹かれる理由の裏側にはこんな側面があったのかと、驚きの連続の一週間だった。
この日のコンサートの後も、二人で美しい旧市街を歩きながら帰った。私は昼間のセッションの出来事や、今夜のコンサートのこと、一週間のこと、少ないボキャブラリーの中でたくさん話したように思う。彼女も熱を込めていろんなことを話してくれた。こうして彼女と親密に話せているこの瞬間を、日本にいたときに想像できたろうか。遠くまで、本当にはるばる、灼熱のSienaまで来て本当に良かった。
少しハードだったけれど、夢のような一週間はあっという間に過ぎた。明日は再びZurichに戻る。

学生たちの演奏

スザンヌのクラスの学生

美しい夜の街並み

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